« フロイト全集18から『マゾヒズムの経済論的問題』(2) | トップページ | フロイト全集18から『精神分析への抵抗』 »

2007年12月18日 (火)

フロイト全集18から『神経症および精神病における現実喪失』

 この論文では現実との関係が扱われているのですが、以下の箇所が引っかかりました。

「精神病の場合、現実に対してそれまで結ばれていた関係が心的に沈殿したもの、つまり、想い出-痕跡、表象、判断をもとにして、現実の改変が行われる。これら想い出-痕跡、表象、判断は現実から獲得されたものであり、またこれらが心の生活のなかで現実の代わりとなってきたのである。しかしこうした関係は完結したものではなく、新しい知覚によって絶えず豊かにされ、変化させられる。したがって、精神病にとっても、新しい現実に対応するかのような知覚を手に入れるという課題が立てられ、それはきわめて徹底した仕方で幻覚という道を通って達成される。」(岩波版p314)

 3つ目から4つ目の文のあたりの意味が取れず苦しみました。「知覚」と「新しい現実」の関係ってどうなんだろうと思ってしまいます。原文に当たってみると、3つ目の文は過去形です。これを参照して、以下のように直してみました。

「精神病の場合、現実に対してそれまで結ばれていた関係が心的に沈殿したもの、つまり、想い出-痕跡、表象、判断をもとにして、現実の改変が行われる。これら想い出-痕跡、表象、判断は現実から獲得されたものであり、またこれらが心の生活のなかで現実の代わりとなってきたのである。しかし現実に対してそれまで結ばれていた関係は完結したものではなかったし、新しい知覚によって絶えず豊かにされ、変化させられていた。したがって、精神病になってからも、新しい現実に対応するかのような知覚を手に入れるという課題が立てられ、それはきわめて徹底した仕方で幻覚という道を通って達成される。」(代案)

 最後の下線の箇所は、岩波版のままで正しいんですけど、少し変えてみました。

 こうしてみるとフロイトの論はきわめて明瞭ですし、 とくに慢性的に幻覚妄想を産出し続ける妄想型統合失調症者について、これ以上うまく説明できる論はないのではないでしょうか。

 世間では、やれ「患者は幻覚妄想に支配されて現実検討能力を失う」とか、逆に、「患者は現実検討能力を失っているため、非現実な幻覚や妄想を信じてしまう」などといわれたりしますが、患者が現実検討能力を失ってなどいないということは、同様の慢性患者同士が会話する際に、互いに相手の話を信じてしまうことなどほとんどないことからも明白だと思いますけどね。

フロイト全集 18 1922-24年 (18)

フロイト(著), 新宮一成(編さん)

出版社: 岩波書店 (2007/08)

« フロイト全集18から『マゾヒズムの経済論的問題』(2) | トップページ | フロイト全集18から『精神分析への抵抗』 »

フロイト」カテゴリの記事

フロイト全集(岩波書店)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: フロイト全集18から『神経症および精神病における現実喪失』:

« フロイト全集18から『マゾヒズムの経済論的問題』(2) | トップページ | フロイト全集18から『精神分析への抵抗』 »

2021年12月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ