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2007年12月10日 (月)

フロイト全集18から『「不思議のメモ帳」についての覚え書き』

 この論文の岩波訳もとても良いので、やはり一気に読み通すことができました。

 この論文では、「不思議のメモ帳」という例を用いている点は新しいものの、ここに描かれている意識の作用様式は、『夢判断』の第7章に示された光学モデルで示されていることとさほど違いはないと感じます。もちろんそれは、私が大昔にこの論文を読んで得た知識に基づいて『夢判断』を読んでいるからかもしれませんが。

 ただし、無意識から、意識表面に向けて、備給が周期的に発送されては引き揚げられるという箇所(p322-3)は、私の頭の中に記憶されていませんでしたので、今回読んで実におもしろい考え方と感じました。

 この論文で気になったのは、「神経支配」と訳されている語、「Innervation」についてです。辞書では、「1【解】神経支配(末梢神経の分布)。2【生理】(神経を通じての)刺激伝達」と二つの訳語が載っていますが、ここでは、周期的に備給を発送し引き揚げる作用を指しているのですから、辞書の二番目の意味ではないでしょうか。ただし、「Innervation」という語に「刺激Reiz」という語は含まれていないので、例えば「神経伝達」という訳が適当と思います。まずは以下の箇所です。

 「その際、想定していたのは、備給が神経支配に沿って、周期的に瞬発的な推進力を受けて内部から、十分な浸透性をもつ知覚-意識系へと発送されては、また引き揚げられるということである。」(岩波版p322。下線は引用者)

 このうち「備給が神経支配に沿って」の箇所は、原文通りではなく、少し訳文がいじられています。しかし直訳で「備給の神経伝達が」とすれば意味は通ります。

 「その際、想定していたのは、備給の神経伝達が、周期的に瞬発的な推進力を受けて内部から、十分な浸透性をもつ知覚-意識系へと発送されては、また引き揚げられるということである。」(代案)

もう一箇所あります。

 「このようにして私は、不思議のメモ帳の場合には外部の力によって生ずる接触の中断が、ここでは神経支配の流れの非連続性として生起すると見たのであった。」(岩波版p322-3)

 解剖学を少しでも学んだ者にとって、「神経支配」という語は、末梢器官と神経とが繋がる静的構造という意味になります。なので、上記箇所の「神経支配の流れ」という表現そのものに違和感が感じられますし、「非連続性」の意味も、時間的な非連続性という意味には受け取りがたいと思います。ここが例えば「神経伝達の流れの非連続性」であれば意味が取りやすいと思うのです。

フロイト全集 18 1922-24年 (18)

フロイト(著), 新宮一成(編さん)

出版社: 岩波書店 (2007/08)

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