フロイト全集9より『舞台上の精神病質的人物』4
この論文の岩波版での翻訳について、拙訳(HPにて公開)との比較の続きです。
それは、葛藤という 筋立てでなければならず、そこには、意志の努力とそれに対する抵抗がはらまれていなければならない。(岩波版p176)
すなわちそれは葛藤からくるストーリーでなくてはならず、意思と抵抗との苦闘を含まねばならない。(拙訳)
意志と抵抗うんぬんの部分ですが、岩波版は「努力」と「抵抗」が同格と捉えているのに対して、拙訳では「意思」と「抵抗」とを同格としています。原書では「Anstrengung des Willens und Widerstand」となっています。「Willens」が2格である一方で、「Widerstand」は2格ではなさそうですから、拙訳は間違いでして岩波の訳が正しいです。拙訳の訳語をそのまま用いるなら、「意思の苦闘と[それへの]抵抗」となります。
この性格悲劇は、アゴーンに付き物のあらゆる興奮を利用するもので、人間的諸規則の縛りを捨て去った際立った登場人物たちによって演じられると成果があがるゆえ、本来は一人以上の主人公をもたねばならない。(岩波版p177)
これは競争[Agon,葛藤]のあらゆる興奮を伴い、人間制度の諸々の制限から自由な傑出した人物たちの間で、利得の獲得を目指して演じられるものであって、本来、二名以上の主人公がいなければならない。(拙訳)
「効果が上がる」「利得の獲得を目指して」という全く違った訳のもととなったのは、原文では単に「mit Gewinn」という副詞句です。これも辞書をひいて考え直してみると、やはり岩波版が正しいように思われます。
同じ引用箇所でもうひとつ、「mehr als einen Helden」は「一人より多い主人公」ですから、日本語では「二人以上」が正しいと思ったのですが、ここは拙訳のほうが良さそうです。
今回は私の間違いが目立ちました。岩波版を読むと「ああそうか」って感じですぐに拙訳の間違いに気づくんですけども、一人でミスなく翻訳することは難しいですねえ。
フロイト(著), 新宮一成(編さん)
出版社: 岩波書店 (2007/11)
最近変な事件や変な鑑定結果のニュースが多いですねえ。しかし報道内容と事実がだいぶ違うことが多いこともあるんで、何ともわからないというのが正直なところ。






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