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2008年4月29日 (火)

フロイト全集9から『ヒステリー性空想、ならびに両性性に対するその関係』

 夢や白日夢、空想とヒステリー症状との関係についての論文です。この邦訳のなかで気になったところを挙げます。

「夜の夢では、ほかでもないこの種の白昼の空想が、複雑にされ、歪曲され、意識的な心的審級によってあえて曲解されたかたちで、夢形成の核をなしているからである。」(岩波版242頁)

 意識的審級が「あえて曲解する」というと、夢の二次加工を指すように思えてしまいますが、二次加工された顕在夢が夢の核であるというのはちょっと変です。原文でここに対応する表現は単に「missverstanden」なので、「誤解する」「思い違いをする」といった意味に捉えればよく、「あえて」というニュアンスはありません。語順もいじって次のように改めたいと思います。

「夜の夢では、ほかでもないこの種の白昼の空想が夢形成の核をなしているが、複雑にされ、歪曲され、意識的な心的審級からは誤解されているのである。」(代案)

 ところでこの論文では、パラノイアの空想についても触れられています。後年には、パラノイアについては同性愛的空想からの防衛であるとか、ナルシシズム的段階への回帰だとか言われるようになるのですが、この論文ではそうした理論にまだ到達していないためか、パラノイアについて「性欲動のサディズム=マゾヒズム的成分」との関係に言及されていますけれど、そこらへんがこの論文の今ひとつ私にはよくわからないところです。

フロイト全集 9 1906-09年 (9) 

フロイト(著), 新宮一成(編さん)

出版社: 岩波書店 (2007/11) 

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コメント

こんばんは。ここでご指摘の部分も、freudienさんの訂正した文章の方が、すっきりしてわかりやすいと思いました。
パラノイアのところは、私は単純に被害妄想のようなことを思い浮かべました。
ここでは、空想と症状の関係を疾患ごとに比較していて。
ローマ皇帝の場合は、空想を強引に現実にしてしまったのであり、
パラノイアの場合はそれに似ているが、本人にとっては現実であっても、他者には容認されていなく、
ヒステリーの場合には、空想がパントマイム風に演じられて症状になっているということでしょうか。

すみません、上のコメントに名前が入りませんでしたが、重元でした。

コメントありがとうございます。私も被害妄想や加害妄想のようなものを考えたんですが、岩波版245頁の真ん中あたりには、翻訳者による補足が大括弧で付されています。
「パラノイア患者の紡ぎ出す妄想も、むろんきれいさっぱりと意識的になってしまってはいるものの、これと同じ類の空想である。それは、性欲動のサディズム-マゾヒズム的成分[自我の偉大さと受苦に関わる]によって担われたもので、同じく、ヒステリー患者のある無意識的空想にその完璧な対応物を持っている。」
この大括弧の内容は、この論文のいちばん最初の一行から持ってきたもののようですが、むしろ、直後にある「人殺し、暴力、性的陵辱」を持ってきた方がわかりやすいんじゃないかとも思います。
これは本文で取り上げるかどうか迷った箇所ですが、本文の誤訳ではないので見送ってました。

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