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2008年4月29日 (火)

精神鑑定

 有名事件の精神鑑定に絡んだ判決のニュースがありました。このところ関連したニュースも続いています。

 それぞれの被告の犯行時の精神状態の詳細以前の問題として、心神喪失の定義を、鑑定医がしっかり認識していないのではないかと思えてなりません。つまり、責任能力を完全に喪失していてはじめて心神喪失の状態であって、責任能力が著しく減弱している状態は心神耗弱であり、かなりの程度の減弱があっても著しいとまで言えなければ完全責任能力が認められうるということです。この点についての認識が改まるだけでも、最近出されたいくつかの鑑定結果は違ったものになったでしょうし、ずいぶんと一般にもわかりやすい整合的なものになるのではないでしょうか。

 最近のニュースから、精神鑑定など考慮に値しないとか、心神喪失という評価に相当する者など存在しない、といった印象を一般にもたれてしまうと、今後の裁判員制度に向けて非常にまずいと思います。精神病状態では、たとえば幻聴に命令されると逆らうことができず、自らの意志に反して自殺を試みたり我が家に火を放ったり最愛の我が子を殺めたりといった、自らの利益に反した破滅的な行為を行ってしまうことがあります。そうしたレベルの精神状態の中で他人に攻撃が向かってしまうことがありうるということは一般に理解していただきたいところです。

 ところで、そもそも一般論として、ある程度高い地位に就いている精神科医は、主に大学病院(重い精神病患者の入院をお断りしていることが多く、措置入院はまず受け入れない)などでの臨床経験が多いでしょうから、本当に心神喪失に値するほどの重い精神病患者を主治医として継続的に担当した経験などなさそうに思います。ですからそうした医師が鑑定医を担当してしまうと、たとえ十分な机上の知識を持って真摯に鑑定に取り組んでいたとしても、中等度の精神病状態に対しても簡単に心神喪失と判断してしまうことになってしまいませんでしょうか。

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