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2008年7月 1日 (火)

フロイト全集9から『精神分析について』

 この論文というか講演録は、非専門家向けに書かれたものという体裁をとっています。しかし私には、5節はかなり駆け足でわかりにくいものに感じられます。この印象は今回の新訳(非常に良い訳と思いました)でも変わりません。これはどうも、フロイトが、「欲望Wunsch」という語を、「欲望に結びついたエネルギー」を指すために用いている(ように読めます)ことが一因かもしれません。

 訳については、以下の一箇所だけを取り上げましょう。

「しかし、私たちの機械では、消費された熱エネルギーの一定割合以上が機械のための有益な作業に使用されているのであって、その点を忘れがちになればなるほど、私たちは、性欲動をそのエネルギー量のすべてにわたって本来の目的から逸らせようと努めることも控えるべきでしょう。」(岩波版168頁)

 この文で、「使用する」と訳されているのは「verwandeln」ですが、これは「変化させる」「変身させる」といった意味の語でして(カフカの小説のタイトル『変身』はこれの名詞形です)、おそらく岩波の全集は、「verwenden」と見誤ったものと思われます。しかしこの箇所のわかりにくさは、この語の訳しかたよりもむしろ、ここでフロイトが持ち出したエネルギー一般についての比喩をどう理解するかにかかっているように思います。私としては、次のように解釈しました。

「私たちはしかし、私たちの様々な機械で、消費される熱エネルギーの一定割合以上を有益な機械的作業に変えようなどとは見込まなくなっているのですから、それにあわせて、性欲動をそのエネルギー量のすべてにわたって本来の目的から逸らせ[て文化的に有益に用い]ようと努めることも控えてしかるべきでしょう。」(代案)

フロイト全集 9 1906-09年 (9)

フロイト(著), 新宮一成(編さん)

出版社: 岩波書店 (2007/11) 

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