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2008年7月 6日 (日)

フロイト全集8から『機知』

 この論文ではじめに取り上げられる機知の例は、有名な「ファミリオネール」というものです。これは身分の卑しい人物が、ある高名な大金持ちから「家族の一員のように(ファミリエールに)」扱われたと言おうとした箇所に用いられた造語であって、「ファミリエール」という語と「ミリオネール(百万長者)」という語が合成されています。すなわち金持ちにありがちな、慇懃ではあってもどこか尊大で見下した態度についてうまく表現してみせている例になっています。

 今回の翻訳ではこの「ファミリオネール」に、「家族の一員のように」と「百万長者」の合成で「百万家族の一員のように」という訳を当てています。これは語の意味から訳せば全く正しいのですが、この場合の訳語では、二つの語に音の類似性がないことと、この合成表現から元の二語(とくに「百万長者」)を類推することが困難であることから、あまり良い訳とは思いません。もちろん、岩波版でもルビや括弧書きによって音の類似性が示されてはいますが、この「ファミリエール」「ミリオネール」はいずれもドイツ語になじみのない読者にとっても分かりやすい単語でもありますし、訳さずにカタカナ表記だけにした方がよかったのではないでしょうか。

 それにしても、「ファミリオネール」の日本語訳を考えるというのはなかなか魅力的な課題でして、この記事を書きながらもつい、どうにかうまく訳せないか、と考え始めてしまいます。そこでファミリエールを「家族的に」、ミリオネールを「俗物的に」としておいて、ファミリオネールを「家俗物的に」というのを考えたりしましたが、結局私にはカタカナ表記より良い訳は思いつきません。

 岩波版19頁の「記念碑下のところ」、20頁以下の「赤い退屈糸」という機知についても同様で、結局カタカナで原語を残すだけのほうが分かりやすそうに思います。

フロイト全集 (8)

フロイト(著), 新宮一成(編さん)

出版社: 岩波書店 (2008/03)

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