フロイト全集8から『機知』8
今回は、些細と思われるかもしれませんが訳文を読んで気になる箇所をいくつか取り上げます。
すなわち、この第一のグループと第三のグループ、つまり語の連想によるものの連合の代替と、不条理の使用とは・・・(岩波版152頁)
同じ語を「連想」と「連合」というふうに訳し分けている理由がわかりません。私はそもそも「連想」と訳されている語はつねに「連合」と訳すべきだと思っているので特に気になった箇所です。
訳語について言えば、この2頁前など多くの箇所に「ひこばえ」という語が使われています。これは、原文での「Abkoemmling」の定訳として毎度使われているようですが、辞書を引いても、①「子孫」「後裔」、②化学用語の「誘導体」、が出てくるだけです。私の推測では、この「ひこばえ」とは、元の独単語「Abkoemmling」の仏訳が「rejeton 新芽、ひこばえ」であることに由来する訳語でして、仏訳からの重訳ならともかくフロイトから直に訳す際にこの訳語を選ぶ理由は見あたりません。
つぎは訳文の表現についてです。
さて、われわれは、機知の技法として記述してきたもの -ある意味では続けてそう呼ばざるを得ないが- は、むしろ機知が快を取り出す源泉であることに気づいている。そして、同じ目的をもつ他の諸方式が同じ源泉から汲み出していることを、奇異には思わない。しかし、機知に独自の、機知にのみ属する技法は、快を廃棄しかねない批判からの異議に対して、快をもたらすこれらの手段の使用を確保する、その方式にある。(岩波版155頁)
私には文意が取りづらかったので、下線部をちょっと訳し換えたいと思います。
さて、われわれは、機知の技法として記述してきたもの -ある意味でそう呼び続けざるを得ないが- は、むしろ機知が快を取り出す源泉であることに気づいている。そして、同じ目的をもつ他の諸方式が同じ源泉から汲み出していることを、奇異には思わない。しかし、機知に独自の、機知にのみ属する技法は、快を廃棄しかねない批判からの異議に抗して、快をもたらすこれらの手段の使用を確保する、その方式にある。(拙案)
フロイト(著), 新宮一成(編さん)
出版社: 岩波書店 (2008/03)





はじめまして。いつもフロイトの情報をありがとうございます。僕は「機知」が収録されたフロイト著作集4を持っているのですが、もし岩波書店版(新宮一成バージョン)のほうが原文を忠実に再現した翻訳なら、お金を奮発しても買いたいなぁと思うのですが、それほど両者に差はありませんか??少しの差なら、人文書院の古い翻訳で満足したいと思います。
投稿: ブルーチップスタンプ | 2008年8月23日 (土) 05時22分
こんにちは。
人文書院のフロイト著作集の訳では、機知が、例えば二重の意味のうち一方だけしか示されていなかったりするので、機知として読みとれないことがかなり多くあるので、とうていおすすめできません。
このブログでは岩波版への疑問点を取り上げていますが、人文書院版で同じことをしようと思ったらとてもこんな数では済みません。過去に私自身が手をつけたものを未完ながら下記URLで公開していますので、参照してみてください。
http://homepage3.nifty.com/freud/4/Witz.htm
投稿: freudien | 2008年8月25日 (月) 07時01分
なるほど、やはり新訳のほうが分かりやすいですか!なんとか購入したいと思います。アドバイスありがとうございます。
投稿: ブルーチップスタンプ | 2008年8月28日 (木) 12時12分