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2009年7月

2009年7月26日 (日)

ヤスパース

 ヤスパース『精神病理学原論』(みすず書房)を、運転中の信号待ちの時などに、少しずつ読んでいます。正直なところ、自分好みの考え方の本ではないので、こういう読み方でもないと続きません。いま半分ほど読み終えたところです。

 

 しかしおもしろく感じられるところが結構あります。例えば、患者の芸術作品について、著者はどうも積極的な価値を見出していないように思われ、患者にとっての治療的な意味や芸術的価値について触れない冷淡な表現で語られていることなど、私には著者の考え方が、「こんな考え方もあるんだ」とむしろ興味深く思います。例えば:

 精神分裂病的過程の群のある程度才能のある患者では、その原始性、明瞭な表現方法、不気味な意味がものすごく人にせまる力のために、健康者にも強い印象を与えることは否定できない。(175頁)

 ところで次の箇所は、ごく当たり前のことが書かれているだけですが、自分が引きこもり論について普段感じている違和感にまさしく該当する内容であって、印象に残るものでした。

 周囲の人々が観察する時には昔から患者のすることの内容がもっとも目につくものであったし、精神医学の学問もはじめはこういう見方から出発した。そして内容の点で特徴的な行為の仕方に名をつけて病気として分類し、有名なモノマニー、単一狂の説を作った。これは実りのないもので外面的なことしか言っていないものであるとされて、まもなく棄てられた。この説による名前はことに専門家以外にまだよく用いられている。窃盗狂、放火狂、飲酒狂、色情狂、殺人狂など。(176頁)

 ひきこもりもまた、単なる行動の特徴にすぎませんから、ひとまとめにして論じても「実りないもので外面的なことしか言っていない」ことは自明なように思えます。

精神病理学原論 
カール ヤスパース (著), Karl Jaspers (原著), 西丸 四方 (翻訳) 
みすず書房; 限定復刻版 (1971/01)

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