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2009年12月29日 (火)

「病的体験」(2)

 約1年前にこのブログに書いたのですが、「病的体験」という用語は臨床上かなり頻繁に用いられるにもかかわらず、精神医学辞典や教科書の類で探しても語釈がみつかりません。

 当時唯一見つけたのがメジカルフレンド社『精神科看護用語辞典 新版第2版』の記載です。

病的体験 pathological perceptions

幻覚や妄想など、精神病的現実によって生じ、患者が主観的に体験していること。患者は自己本位の立場を変えることができなくなる状態になる。したがって、患者は自己の精神病的変化を病的とは思えなくなる。

 これは英語表現との対応も疑問ですし、内容も精神病的現実が先にあって結果として病的体験があるかのようで、どうも我々の日常の用法と違うという不満がありました。

 ところが先日、古い病棟でたまたま同じ本の古い版を広げてみたら、次のようなまったく異なる説明が見つかりました。

病的体験 [D] pathologisches Erlebnis

周囲から客観的にわかる症状に対して、患者自身が主観的に経験している、周囲の者には了解しがたい体験をまとめていう。したがって、この中には幻覚、思考障害、自我障害等がある。ただいずれも本人が体験している(いた)ことがはっきり認められるものである。またふつうは精神分裂病についていうことが主である。そこで「病的体験」があるかないか、表情、態度、行動から確かに推定できることもあるが、一般には、患者が体験している最中か、経験したあとで、自分から言葉で語り、初めてわかることが多い。

 この説明ならば筋が通っていますし、病的体験を核にして妄想を組み立てるという、我々が慣れ親しんだ考え方とも齟齬を生じません。これは平成5年発売の「第5版」でして、どうしてこれを改訂して初めに引用した方の語釈に変えちゃったのか、実にもったいないことです。ただ、私としては、一次妄想も病的体験の例に加えるべきと思っていますが。

精神科看護用語辞典

日本精神科看護技術協会「精神科看護用語辞典」編集委員会 

メヂカルフレンド社; 新訂版 (2000/01)

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