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2010年4月13日 (火)

フロイト全集11から『自伝的に記述されたパラノイアの一症例に関する精神分析的考察』(2)

 この論文の岩波全集の訳文で気になる箇所の続きです。

「のちになると幻視と幻聴が加わり、全般的感覚障害と一緒になって、彼の全感覚、全思考を支配するようになった。」(岩波版105頁)

 上記訳文の「全般的感覚障害」は、原文では「Gemeingefuehlsstoerungen」ですので、「一般感覚の障害」とするべきです。「一般感覚」とはおおざっぱに言えば、五感以外の、非限局的な自己身体感覚のことで、飢え、渇き、疲労、めまいといった例が辞書に載っています。なお、たしかドイツの精神科医シュルテは、この一般感覚の障害を精神病者自らが不調と感じることが、「病感」の基礎になると考えました。

 次はちょっとした訳し落としです。

「私自身も思うのだが、ひとりの主治医への共感に満ちた感覚が、ひとりの男性において、八年間もの歳月が経過したのちに突然強烈に現れてきて、たいへんに重篤な精神障害を惹起する契機になるという仮説は何とも奇妙である。だが、通常は仮説を立てることが薦められているのだから、その仮説検証を突き進めないでこの奇妙な仮説をその不確かさゆえに捨て去ってしまうのは間違いだ、と私は思う。」(岩波版145-6頁、下線は引用者)

 下線部は正しくは「その内的な不確かさ」です。

フロイト全集〈11〉1910‐11年―ダ・ヴィンチの想い出 症例「シュレーバー」

高田 珠樹 (翻訳), 甲田 純生 (翻訳), 新宮 一成 (翻訳), 渡辺 哲夫 (翻訳)

出版社: 岩波書店 (2009/12)

 抗不安薬のなかでもかなり高頻度に使われるものに、『コンスタン』という商品名のものがあって私も臨床上なじみが深いのですが、先週出席したフランス語教室で「constant」という語を耳で聞いて、恥ずかしながら、はじめてこの薬品名がフランス語だということに気がつきました。かなり基本的な単語なんで何度も見ていたはずですけど、目で読むだけでは気づかないものです。

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