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2011年7月 4日 (月)

テレンバッハ『メランコリー』

 勤務先の病院で、毎朝のミーティング時に議題がない日はテレンバッハの『メランコリー』(例の「メランコリー親和型性格」なる概念が提唱された本)の症例をひとつづつ読んで同僚と検討してきたのですが、ここでもこれから少し取り上げていきましょう。

<症例1>女性患者エリーゼ・Kは、たくさんの仕事をこなす能力を持った人だった。三人の子供をもつ主婦としての仕事のほかに、彼女は7ないし8時間、葉巻工場で働いていた。さらに庭仕事もそこに加わった。そのほかに、彼女は自分や子供たちの着るものを、全部自分で縫ったり編んだりすることにしていた。仕事は夜半までかかることが多かった。こういったことは、63歳になるまで続いた。それだけでなく、彼女は母親から《綿密さも一緒に》受け継いでいた。・・・以下略(邦訳151頁)

 下線部は邦訳では訳し落とされていますので、補っておいてください。

 下線部が抜け落ちたままでもこの患者の莫大な仕事量は明らかだと思います。この本でメランコリー患者(主に1950年代のドイツの大学病院のメランコリー患者です)の病前の勤勉さ、仕事熱心さの例として紹介されているのはだいたいこんな感じで、昔のNHKドラマ『おしん』のレベルの仕事量を想像していただければよいと思います。(紹介されている症例群は、あまり社会的な成功や自己実現の余地のない、日々繰り返される仕事をこなしていた人たちですので、昭和期の勤勉サラリーマンたちの『プロジェクトX』のようなイメージとはちょっと違うように私は感じます。)

 現代の日本にはメランコリー親和型のうつ病が減ったといわれますが、それは、洗濯機・掃除機など家電が普及し、衣類は既製服になり、週休二日制まで普及するなどして、現代日本人がただ単に暇になったからでは?という問いも、一考に値するのではないかと思えてきます。

メランコリー [改訂増補版]

H. テレンバッハ(著), 木村 敏 (翻訳)

出版社: みすず書房; 改訂増補版 (1985/12/5)

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