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2011年10月29日 (土)

ラグビーのワールドカップ

 もう古い話になりますが、録画しておいたラグビーワールドカップの日本代表の試合を観おえました。私はテレビでラグビーの試合を何年も観ていませんでしたが、今回はワールドカップが地上波で放送されたので観てみました。

 日本代表の出来がかなり良かった初戦フランス戦だけを観たあと、しばらく忙しくてほかの試合は何週間か観れず、その間、新聞や雑誌で酷評・批判されているのを読んで「そんなに悪くないのに」と思っていたんですけれど、残りの試合を観て、やはり酷評されても仕方がないかな、と思いました。

 しかしまず良い点を挙げるなら、以前の日本代表のバックスには、体格に勝る外国人選手相手にタックルできない選手が混じっていましたけれど(前々回大会なんか、半分ぐらいの選手はほとんどタックルできず、そのせいでフランス戦では金星を逃しました)、今回はそういう不満は抱かずに観ることができました。それは日本代表に外国出身選手が多く入り(いったい日本代表は何語でコミュニケーションをとっているんだろう、と疑問に思ったりします)またその外国出身選手も実直なプレーを続けられる選手がそろっていたからでしょう。かつての外国出身選手はかなり出来にムラがある選手とか、バックスではディフェンスに難がある選手とかだったんですけど、今回はそういう選手がいなくて、いわゆる軽いプレーが少ないのは良かったと思います。日本人選手の体を張ったプレー、スクラム第一列の選手もよく走るプレーはすばらしいと思いました。

 敵との間合いが詰まった状態でパスが回って来ると、そのパスを受けたらすぐに相手のタックルをくらうことが予想できるわけですけど、昔はそれを嫌うバックス選手がいて、パスが来てもしっかりキャッチせずにボールをはたいて隣の味方のほうへタップするような雑なプレー(たいていは隣の味方のところでかえって大きなピンチを招く)も、昔は多かったんですが今はあまり見当たりません。きちんとボールを持って相手のタックルを受けています。

 ただ、実直なプレーは守備面では好ましい反面、攻撃にも特段の魅力のない、面白みの少ない戦いぶりでした。まあ外国出身選手たちは、強豪国の地区代表ぐらいのレベルでしょうから、ちょっと致し方ないかもしれません。かつての日本は、バックスへの展開プレーでは、味方選手の後ろを飛ばしてパスを通すサインプレーをいわばお家芸としていましたが、いまやそれも世界中で普通に使われていて、ニュージーランドもカナダも、後ろ飛ばしパスで日本からトライを奪っていました。これでは、日本ならではのプレーというのはほとんど見あたりません。この辺もメディアが不満に思う理由でしょう。

 私はむしろスクラムハーフの動きが特に気になるんですけれど、攻撃の展開の中で、スクラムハーフが密集からパスアウトするとき、何歩か走りだしながらパスすることが多いことに不満を感じます。彼らがボールを持つ時間をできるだけ少なくしてすぐに放ってほしいところです。特にトンガのようにディフェンスの出足の早いチームが相手だと、パスをもらう人のところですでに間合いが詰まってしまい、バックスは思うような展開ができません。スクラムハーフは、走り出しながら放ったんだから次の密集には早く到着できるというわけでもなくて、タイミングを逸してターンオーバーされることも多かった。

 とはいえ、いつぞやの日本代表スクラムハーフとは違って、ディフェンスにも貢献しているし、フォワードが押されるととたんにスタンドオフへのパスが不安定になってワンバウンドになるということも少ないので、十分によくやっているとは思います。パスを受ける10番以降のバックスのほうも、スクラムハーフからのボールの出方(放るまでの歩数)が毎度違うにも関わらず、よく対応して合わせていたと思います。

 ところで、かつての日本も(おそらく今回以上に)弱かったんですが、一瞬の敏捷さで勝るシーンとか、小さい体で大きな相手の足にタックルして倒すシーンとかがときどきあって、選手も観客もそれに鼓舞されながら(センターに平尾や朽木が居ると、何か予想もつかない創造的なプレーをしてくれるんじゃないかという期待感があったりして)、負けていても最後まで熱中できましたけれど、あれを善戦として見ていたのはある意味錯覚であって、試合全体の出来としては決して世界に通用していたわけではないです。宿沢監督時代に、主力を欠いたスコットランドとのテストマッチに勝ったことやワールドカップでジンバブエに一つ勝ったことはありましたが、それ以前の戦績と言えば、強豪国に接戦を演じたとか、強豪国の、代表より下の選抜チームに勝ったとかいうエピソードが、数年に一度程度あっただけです。アジア大会でも、日本より遙かに選手人口が少ない韓国によく負けてました。

 さて、じゃあ日本代表はどうしたらいいかというのは非常に難しいところです。日本代表は日本国内のラグビーのレベル・傾向を反映しているわけですから、重点的に強化したい点を見定めたうえで、それが伸びるような国内ルールを作って、そのルールで育った高校生が主力となるまで10年単位の長い目での強化が必要でしょう。たとえばプレースキッカー養成のためには、トライ後のゴールを国内では4点ぐらいにしてみるのも良いのではないでしょうか。あとは、バックスがタップパスを失敗したときとか、パスできそうにない状況で苦し紛れに蹴ったときなどは、地面に落ちたボールを敵に奪われるわけですけれど、そこから相手にトライされたときには国内では6~7点与えてみるとかして軽いプレーを戒めてはどうでしょうか(そういうプレーは、強豪国相手の試合でチャンスを生むことはありません)。ほかでは、ラックの最後尾の選手がボールを拾い上げて味方と組み合いながら相手に当たって押し込んでいくようなプレーは、本当は反則ぎりぎりなのにけっこう見逃されてきましたけれど、日本代表が外国チーム相手の試合で同じことをしてモールを押し込んでいくことはありえませんから、まあ国内では厳密に反則と決めて、一度バックスに出すプレーを徹底させた方がいいでしょう。

 だらだら書いてきましたが、私のようにちょっと昔を知っているファンは、日本のラグビーが「昔は強かった」とは思わないにしても、かつて「大きくゲインして密集ができたら次は早く球を出してブラインドサイドを攻める」とか、「バックスは抜けたら外を見ろ(外の選手は、味方が抜けたら横に顔を出せ)」、というような定石といえる組織的な動き方があったり、「ボールは両手で持て」「地面のボールはまたいで拾え」とかいう基本の戒めが選手の間に浸透していた時代が懐かしく、そうしたプレーが減ってラグビーそのものが昔とは違ってきているのはなんだか寂しいです。王国ニュージーランドにも、実直に基本を守っておらず一か八かのプレーをする選手が現れていますし、まあきっと私のほうが時代遅れなのでしょう。

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