« 2012年12月 | トップページ | 2013年12月 »

2013年1月

2013年1月19日 (土)

ヤスパース『原論』の再読(第四章)

 先週の精神病理コロックでヤスパースを話題にした発表を聴き、ひさしぶりにヤスパースの本に手をつけてみることにしました。このブログでは、みすず書房から出ている『精神病理学原論』の翻訳の疑問点の検討を、第3章の終りまで済ませていましたので、その続きです。

 最初は、『hervorwaechsen』という語の訳し落としです。ただしこの語に適当な日本語を当てるのは難しいと思います。

外部からの作用は内部の素質に対立するものである。前者の作用は外因性といい、後者のは内因性という。(邦訳232頁)

代案:外部からの作用は内部の素質に対立するものである。前者の作用は外因性といい、後者から育ち現れるのは内因性という。

 次です。

解剖学的局在という、このこと自体は非常に興味のある説は精神病理学には今まで重要性はなく、何の結果もこれから出てこない。(邦訳244頁)

 「これから出てこない」の箇所ですが、「今まで」のあとに「これから」と出てくるので、私は未来のことを言っているのかと勘違いしました。

代案:解剖学的局在という、このこと自体は非常に興味のある説は精神病理学には今まで重要性はなく、何の結果も出ていない

 次はケアレスミスのようです。

内因性の条件は素質という条件でまとめられる。(邦訳254頁)

代案:内因性の条件は素質という概念でまとめられる。

 さて、この第4章でも『でき』という理解困難な訳語が頻出して困ります。この点についてはすでにこのブログで何度も触れました。

ヤスパース(3):ヤスパース訳の「でき」

ヤスパース『原論』の再読(第二章第一節)

 後者でも書いたように、Konstitution、Disposition、Anlage、Veranlagungには、それぞれ順に「体質」「素因」「素質」「資質」とあてておくとだいたいの箇所で意味が通ると思います。たとえば今回の範囲では次の箇所です。原語を大括弧内に補っておきます。

病的過程によって、人格や精神的なでき[Konstitution→体質]や、ひとりでに進んでゆくなりゆきへのでき[Disposition→素因]などの上に変化が起きるときにも、将来の生活にとってはいわば新しい素質[Veranlagung→資質]ができたようにみられるが、やはり素質[Anlage]といわない。これからの先の生活へのこういう基礎はみな後天的に得られたものと呼ぶ。(邦訳255頁)

 このあと邦訳256頁からの遺伝の節についてはすでにこのブログで取り上げました。

ヤスパース『原論』の時点での遺伝学

 5章以降はまた次の機会に扱うことにします。

精神病理学原論 
カール ヤスパース (著), Karl Jaspers (原著), 西丸 四方 (翻訳)
みすず書房; 限定復刻版 (1971/01)

Allgemeine Psychopathologie Ein Leitfaden Fur Studierende, Arzte Und Psychologen (1913) Karl Jaspers (ペーパーバック - 2009/11)

« 2012年12月 | トップページ | 2013年12月 »

2021年12月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ