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2014年12月

2014年12月31日 (水)

今年の三冊

 また一年が終わり、各新聞には書評担当者たちが選ぶ「今年の三冊」が載りました。 昨年末の各新聞社の『今年の三冊』には興味深い本がたくさんみつかって今年いくつか楽しく読みましたが、今年末の新聞には私は興味を惹かれるものがみつかりませんでした。みなさんはいかがでしょうか。

 私は例によって今年発売された本はあまり読んでいないのですが、思い出してみると6冊ぐらいありますから、例年よりは多いようです。そこから次の3冊を選びました。

同時代の精神病理ーポリフォニーとしてのモダンをどう生きるか (2014/4/11) 鈴木國文

ドゥルーズと狂気 (河出ブックス) (2014/7/14) 小泉 義之

ラカン 患者との対話: 症例ジェラール、エディプスを超えて (2014/10/10) 小林 芳樹

 『同時代の精神病理』は、近年の精神科患者の病像変化などを論じて示唆の多い一冊。「人格」という概念の重要さを改めて痛感させられました。これまでドゥルーズに馴染みはなかったのですが、『ドゥルーズと狂気』は挑発的な示唆に富み、私はドゥルーズ『狂人の二つの体制』など原書で購入したほどです。ただ、ドゥルーズが幻覚や妄想の目立たない精神疾患について論じた箇所を挙げて、サイコパスなどを念頭に置いているのではないかと述べている箇所などについては、著者は精神病(とくに統合失調症)を陽性症状で診断する日本流の精神病理学から脱していないと考えられます。実際、フランスでは陽性症状が目立つ例はパラノイア(またはパラノイド型統合失調症)と診断され、目立たない例こそ統合失調症と診断されます。ただこれは、フランス留学経験のある精神科医たちすら良く理解していない点であり、やむを得ないところかもしれません。最後のラカンの診察記録は、ラカンがフランス精神分析に残した遺産的価値をもつ内容で、ぜひ読まれるべきもの。とはいえ患者の症状はむしろ現代臨床でありふれてみられるものです。翻訳も非常に読みやすい。やはり一人で訳しているせいかケアレスミスが散見されますが、許容範囲でしょう。

 今年はフロイト『子供が叩かれる』を題材にした講演を聴いた後、岩波全集版の邦訳『子供がぶたれる』を読みましたが、あまりにもひどい翻訳に驚きました。当ブログではそういった場合にはよく翻訳正誤表を作って掲載していますが、旧訳の人文書院版を読めば十分なので、正誤表を作る気にもなれません。岩波版全集ではこれまで『制止・症状・不安』が最悪と思ってましたが、『子供が叩かれる』はそれをはるかに凌ぎます。

 さいきん本業が忙しくなかなか更新できませんが、来年もまた細々と書いていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

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