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2016年8月 8日 (月)

セミネール11巻の仏語正規版でも・・・

 ラカンのセミネール11巻5章、邦訳74頁に、「下にあるものunterlegt」「未決のものuntertragen」という二つのドイツ語は「souffrance苦悩、我慢、未決状態」というフランス語の多義性のおかげで一語に表される、という箇所があります。

 ちなみに言っておくと、現在刊行されているラカンのセミネールは、口述された講義の速記録から起こされたもので、ラカン本人が書いたものではありません。 

 上のドイツ語二語はスイユ社から刊行されているフランス語正規版でも同様ですが、この二語には「souffrance苦悩、我慢、未決状態」に対応する意味は無いし、特に後者「untertragen」は辞書にも載っていないので、邦訳での訳語「未決のもの」はでっち上げではないでしょうか。とにかく邦訳は解釈に苦労したようで、邦訳79頁にもう一度出てくる箇所では、スイユ版ではドイツ語の二語がそのまま再掲されているのに、邦訳版では出典不明の「その下に横たえられたDaunterliegenden」という一語に置き換えられています。

 しかしそもそもここのドイツ語は、意味からして、本来、「unerledigt未解決の」と「unertragen耐えられない」という二語なのではないでしょうか。つまり本国のスイユ版も、ドイツ語の筆写に際して間違っているのではないでしょうか。

 傍証として…この二つの語の品詞が同じだとすると過去分詞でしかありえませんが、もしもスイユ版通り接頭語が「unter」だとすると、後者の過去分詞は「untergetragen」となりそうに思われ、やはりスイユ版どおりのドイツ語はあり得ないように思います。

 ちなみにこの箇所についてはALIから出ているフランス語非正規版も同様に苦労しており、二度目に登場する箇所では後者はギリシア語の「ヒュポケイメノン」とされていたりしますが、上記のように考える方がすっきりすると思います。

 まあ、これがラカンが語ったとおりかどうかは、証明のしようもありませんが。

精神分析の四基本概念
2000/12/15
ジャック ラカンジャック=アラン ミレール

Les Quatre Concepts Fondamentaux De La Psychanalyse
1973/1/1
Jacques Lacan, Jacques-Alain Miller

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