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2017年11月25日 (土)

ラカン『精神病』6章再読

 久しぶりに『精神病』のセミネールに戻ります。

 まず、シェーマLを念頭に置いた次の部分に訳し落としがあります。

この要求にこそ、私の小さな四角形は応えようとするものです。その四角形は、主体から他者へと向かいます。つまり、一方は現実界、すなわち主体、身体へと向かい、反対の方向は、相互主体性という大文字の他者(A)へと向かいます。(邦訳上巻121頁)

この要求にこそ、私の小さな四角形は応えようとするものです。その四角形は、主体から他者へと向かいます。そしてここである仕方で象徴界から現実界、すなわち主体、身体へと向かい、反対の方向は、相互主体性という大文字の他者(A)へと向かいます。(代案)

 次は、時制の間違い二つが大きいと思いますが、あとはちょっとした訳語の訂正です。

それは、自分が聞いている言葉は、他の誰にも聞えてはいない、ということを患者は容易に認めるということです。「そう、おっしゃる通りです。聴いているのは私一人です」と患者は言うのです。
 この場合、現実性ということが問題となっているのではありません。患者は、それぞれの能力に応じた言い回しによって、この幻聴という現象が現実とは別の次元に属するものであることを認めます。幻覚が現実性を持っていないことを患者はよく知っており、その非現実性をある点までは認めています。(邦訳上巻123頁)

それは、自分が聞いている言葉は、他の誰にも聞えてはいなかった、ということを患者は容易に認めるということです。「そう、おっしゃる通りです。聴いていたのは私一人です」と患者は言うのです。
 この場合、現実性ということが問題となっているのではありません。患者は、それぞれの能力に応じた言い回しによって、この幻聴という現象が現実界とは別の次元に属するものであることを認めます。幻覚が現実性を保証されていないことを患者はよく知っており、その非現実性をある点までは認めています。(代案)

 次ですが、邦訳では「de」を「…によって」と訳されてますけれども、私は「の」で良いと思います。

詩とは、世界への象徴関係の新しい次元を引き受けている主体によってなされた創造です。(邦訳上巻128頁)

詩とは、世界への象徴関係の新しい次元を引き受けている主体の創造です。(代案)

 最後は、文法的には邦訳通りとも取れるのですけれども、たぶんラカンの意図は私の代案の方だと思います。

否定においては、象徴、つまり「是認」という価値を与えることが問題なのではなくて、実在という価値を与えることが問題となっているのです。(邦訳上巻138頁)

否定においては、象徴という価値を与えること、つまり「是認」が問題なのではなくて、実在という価値を与えることが問題となっているのです。(代案)

 今回の代案は、3つめ以外はさほど解釈に影響しないようにも思えますけれど、こだわるひとには看過できないかもしれない微妙なラインじゃないでしょうか。

精神病〈上〉
ジャック ラカン (著), ジャック・アラン ミレール (編集), 小出 浩之 (翻訳), 川津 芳照 (翻訳), 鈴木 国文 (翻訳), 笠原 嘉 (翻訳)
出版社: 岩波書店 (1987/03)

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